杉本寺へ行くには、JR鎌倉駅東口からバスに乗ります。バスターミナルに向かって右側の5番乗り場へ。1時間でかなりたくさんのバスが出ているのでいずれかに乗車すればOK。「杉本観音」で降りましょう。
バスを降りて金沢街道から見る杉本寺の入り口は長い階段。仁王像が迎えてくれる茅葺の屋根の門を過ぎると、実に趣のある苔生した石段に出会います。以前はこの石段が参拝者に解放されていたそうですが、景観保護のため見学のみとなっています。左側の迂回路からご本堂がある一上部へと向かいます。杉本寺は鎌倉最古の寺といわれており、734年奈良時代の創建です。そんな歴史あるお寺にも関わらず、本堂の中に入って中を隅々まで見学させてくれる開かれた場所なのです。間近で迫力のある仏様を数多く見る事が出来ます。(UNIQUELY鎌倉「靴を脱いでお堂に上がれるお寺」)来る度に身が引き締まりつつも暖かい気持ちにさせてもらってます。
杉本寺前の道路を渡り、橋を渡ります。「左可井」さんを左に見ながら直進していくと石碑があります。石碑の隣にある案内板に「平成巡礼道」とありますので、その方向へ進んで行きましょう。住宅の間を抜けて行くと間もなくして山道の入り口に辿り着きます。木の幹に「平成巡礼道」と示されているので確認。さて、山道へ出発です。
この場所も鎌倉に多くある地形「谷戸」の湿潤な気候。薄暗い森の中がしばらく続きます。足下はコケやシダなど湿度を好む植物が多く繁茂していて、道は階段状に舗装されていてもたまに滑りますので要注意。
10分ちょっと登れば開けた場所へ出て山頂へ到着です。薄暗い上り道からの開放感が最高に気持ち良い場所です。標高120mの山頂からは、鎌倉の街が一望出来ます。天気が良ければ富士山や伊豆半島まで望めるビューポイントです。ちなみに衣張山は、夏に白い布を雪に見立てて山に張り巡らせたところから来ているそうです。吾妻境によれば、北条政子が源頼朝に雪が見たいと言ったのだとか。ロマンチックなエピソードですね。
布張山山頂から15分ほど下るとハイキングコースの出口です。ここは「子ども自然ふれあいの森」という公園の中になっていて、散歩をしている地元の人たちも多く地元民の憩いの場になっています。公園内を木造の柵に沿って右手に進んで行くと、眺めの良い「関東の富士見百景」へ到着。曇り空のため、富士山は見る事が出来ませんでした。こちらも絶景ポイントなのですが、今回目標のポイントはこちらではなく更に先になります。富士見百景を背にし、住宅街の道路へ出て車止のある入り口から再び公園内に入って行きます。公園の案内板に「パノラマ台」の表示を発見。ちょっとわかりにくいのですが、こちらを目指しましょう。公園内に案内板もあるのでそちらを参考にすると良いでしょう。
公園入り口から直進するとT字路に出るので、右へと進みます。遊歩道が整備されたふれあいの森はとても歩きやすくて自然がたくさん、鳥たちのさえずりが聞こえて来ます。パノラマ台への道はちょっと険しいですが頑張って登りましょう。達成感は衣張山の山頂より上かもしれません。衣張山より海を近くに感じることができます。ベンチもあるのでここで休憩するのも気持ち良いです。
パノラマ台から道を戻り、「名越切通し・法性寺・大切岸」の指し示す方向へ進んで行きましょう。ふれあいの森から遊歩道がさらに奥へと続きます。歩いて来た尾根沿いの道から、左下に続く新しい階段を降りて行くと「お猿畠の大切岸(おさるばたけのおおきりぎし)」と呼ばれる石切場跡が約800mに渡って続きます。層になった岩壁がこれほど広範囲に現れるととても壮大です。雨風に晒されてきたためか、表面は丸まって幻想的な光景を作り上げています。見上げると高いところは10mくらいの高さまで崖が続いています。足元はきれいに整備されとても歩き易いです。
鎌倉幕府が三浦一族の攻撃に備えて作った防衛遺構だと言われて来ましたが、平成14年の発掘調査で、大規模な石切り作業の跡だということが確認されました。防衛壁としての役割が完全否定された訳ではないようですが、当時の建物は基礎に大量の切石が使われていた事から、ここが石材の生産地であったことが考えられるようです。またこのあたりの平場からは火葬跡などもみつかっていて、すぐ近くの葬送機構である「まんだら堂やぐら群」とも関連がありそうです。
ちなみに「お猿畠」という地名は、日蓮が松葉ガ谷の法難で草庵を焼き討ちにされたときに、白い猿に導かれてこの地へ連れてこられたことに由来しています。日蓮はここを通り、すぐ近くの法性寺へと逃げたと伝わります。
石切場跡を先に進むとブロック塀沿いに道があるのでそちらへ向かいます。開けた場所へ出ると、数匹の猫たちに出会いました。塀で保護された石碑の上に乗ってのびのびしてました。このあたりまでくると少し空気感が変わりひんやりジメジメした感じに。この先、道を左に上がるとまんだら堂やぐら群、直進すると名越切通しとなっています。
まんだら堂やぐら群は150穴以上のやぐらが集中して作られた、鎌倉の中でも最大規模のやぐら群です。やぐらは中世の鎌倉では死者を弔うために作られていました。穴に納骨して、小さな祠が建てられているものもあります。この周辺は火葬跡や処刑場跡も発見されているようで、日常から離れた特別な場所であった事が伺えます。現在もすぐ近くに斎場があるのも古くからそういう土地であったからからかもしれません。
まんだら堂やぐら群は、平場に150以上のやぐらが集合している場所で、まとまったやぐらが見られる場所としては鎌倉で一番印象深い気がします。現在、保全のため期間限定で毎年公開が行われています。詳しくは逗子市のホームページをチェックしてみてください(まんだら堂やぐら群の公開状況はこちら)。
まんだら堂やぐら群をさらに先へ行くと鎌倉七口のひとつに数えられる「名越切通し」へ到着です。大きな岩、その間を通る狭い道。岩の存在感が数ある鎌倉の切通しの中でもナンバーワンではないでしょうか。実際に近くで見て、その間を通行する事が出来るのも名越切通しの嬉しいポイントです。
当時、名越切通しは鎌倉から三浦半島へ通じる重要な道でした。現在の横須賀線や県道のトンネルが開通する明治時代の初め頃までは幹線道路としての重要な機能を果たしていたようです。尾根を掘り割って作られた切通しは、時代の変化と共に通行しやすいように改修したり地震などで崩落しては復旧…を繰り返しているため鎌倉時代の姿そのものではなくなっていますが、狭い岩の間を通る道は当時の景観を思い起こさせてくれます。
まんだら堂やぐら群、お猿畠の大切岸と合わせて、名越切通し周辺は大規模な葬送機構であったようです。当時の人々がどのような気持ちでこの切通しを超えて行ったのか…歴史に想いを馳せながら歩いて見て下さい。
圧巻の名越切通しを後にして、まんだらやぐら群の方へ戻り「名越切り通し・大町口」の方面に下って行きます。衣張山のハイキングコース入り口のようなシダの覆った森の中。足下は滑るところもあるので要注意です。5分も下ると横須賀線と大町の町並みが眼下に見えて来ます。長勝寺もよく見えます。ジメジメした独特の名越切通し周辺の空気感もここまでくると感じなくなり、現実に戻った感じがするはずです。
大町へ出たらランチタイムいかがでしょうか。この近くで絶品の料理を提供する「zebrA」さんへ。個人的に一押しのzebrAさんのパスタ、今回は「小エビと里芋のジンジャークリームのペンネ」。生姜が効いて和風なのかと思いきやイタリアンで上品な一品でした。クリームだけどしつこくないのでペロっと完食。ここの楽しみのひとつは手作りデザート。写真は「ピンクグレープフルーツのブリュレ」です。甘すぎず大人な風味でこちらも絶品。
zebrAさんからは歩いても15分くらいで鎌倉駅へ着きますが、元気があれば周辺のお寺巡りをしてみるのもおすすめ。妙法寺、安国論寺、妙本寺などもわりと近いです。