鎌倉で梅といえばまずお勧めしたいのが、鎌倉一番の規模、本数を誇る「瑞泉寺」。こちらは本数だけではなく、梅の種類も豊富。とても珍しい「黄梅」も楽しんでいただけます。次点を争うのが北鎌楽の「東慶寺」と二階堂の「荏柄天神社」。どちらも歴史のある社寺で、風情ある様を堪能していただけます。
長谷エリアには、長谷の2大梅名所「長谷寺」と「光則寺」があり、その他の梅の名所も歴史ある寺社の境内にあって、梅の花と寺社建築、歴史の背景までもまとめてお楽しみいただけます。
鎌倉ならではの梅をどうぞ存分にお楽しみください!
境内には150本もの梅の木があると言われる「瑞泉寺」。鎌倉で一番の規模を誇ります。
規模だけでなく種類も豊富です。珍しいものでは、鎌倉市天然記念物に指定されている本堂前の黄梅。この木をもって「牧野富太郎博士(編集部注:日本植物学の父と呼ばれる植物学者)はオウバイの学名を付けられた」と立て札に書かれています。黄梅の他にも白梅、紅梅、緋梅に枝垂れ梅、ソシンロウバイと見るものを飽きさせません。一番の見所は本堂周辺。本堂目の前には前述の黄梅。本堂左脇には薄いピンクの枝垂れ梅。本堂へと伸びる参道の左手に白梅と少しの紅梅。参道右にはここにも黄梅とソシンロウバイと色鮮やかです(その年の天候等により咲く時期も少しずつ異なるのでご注意を)。
山門への階段を上る手前、参拝受付のすぐ奥に前庭があり、ここの梅も見事です。梅の木の間を縫うようにして散歩道があり、梅の花が咲く頃にはまるで梅のトンネルの様。大きく深呼吸してその淡い香りを楽しみましょう。
日当たりの良い、本堂前の梅の方が若干早く咲き、その後を追うようにして前庭の梅が見頃になります。
北鎌倉での一番の梅の見どころと言えば「東慶寺」。普段は円覚寺や建長寺、明月院などに主役の座を奪われがちな東慶寺ですが、この時期には梅の花見が目当てのたくさんの人で賑わいます。
北鎌倉駅から巨福呂坂、鶴岡八幡宮方面へと鎌倉街道を行き、途中で右手に折れるとすぐに東慶寺がありますが、右折するとすぐに山門へと至る階段の途中、斜面から空に向かって大きく伸びる梅の木が迎えてくれます。
階段を登り山門をくぐると目の前には梅、梅、梅。参道手前には鐘楼がありその手前には龍が臥(ふ)せた様な姿の「臥龍梅」が目を引きます。中央から奥へとまっすぐ伸びる参道の両側には紅白の梅や八重の梅が境内を彩ります。
お時間があれば、東慶寺の後に浄智寺へと向かい、その足で葛原岡ハイキングコースへと向かわれてはいかがでしょう。山道を通って源氏山へと抜けることができます。
天神さまといえば「菅原道真公」を祀る神社。菅原道真の梅にまつわるエピソードとしては飛梅伝説があまりにも有名です。
「東風吹かば 匂いをこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」
京都から左遷された菅原道真を慕って、京都自邸の梅の木が左遷先の太宰府まで空を飛んで行ったという伝説で、その梅の木は今でも太宰府天満宮の御神木になっています。太宰府天満宮を筆頭に日本三大天神に数えられることもある荏柄天神社でも「梅」はシンボルになっています。本殿の右手には、鎌倉で一番に咲くと言われる「寒紅梅」。本殿を挟んで左手には大きな白梅の木があり、まだ春の足音も遠く、寒い時期に揃って咲く様は壮観です。この本殿両脇の紅白の梅が見頃を終えた頃には、手水鉢の裏手にある紅梅や臥竜梅、本殿の右手に集中する白梅、絵札塚近くの枝垂れ梅、山門手前のおもいのままなど種類も豊富に3月に入る頃まで楽しませてくれます。
「長谷に梅あり」と鎌倉市内至る所にポスターが掲出され、看板に偽りなしの艶やかに咲く梅が堪能できるのがここ長谷寺。西方極楽浄土と言われ、極楽浄土を模して(イメージして)作られた長谷寺の日本庭園を紅梅、白梅などの梅の木と、河津桜などが彩ります。
今まで気にして見ていなかったからでしょうか、この春(2016年)から設置された(?)赤い傘と緋毛氈のかけられた縁台がアクセントになってこの空間を引き締めます。
暖かい日には梅の花にとまるメジロも風流で、華やかな景色が堪能できます。
鎌倉時代以前からある(伝736年創建)長谷寺の日本庭園に咲く梅は、鎌倉時代に広まった禅宗の一つである臨済宗のお寺「瑞泉寺」の華やかさを一切省いた質実剛健な庭に咲く梅の雰囲気とはまるで対象的。瑞泉寺と長谷寺の趣の違う二つの梅が生み出すコントラストをぜひ楽しんでください。この二つのお寺は距離もありますので、海が近く比較的暖かい長谷寺の梅を先に見て、後日改めて瑞泉寺へと行かれるとちょうど良いかと思います。
長谷エリアの2大梅花見スポットが「光則寺」。
光則寺でまず目につくのは長谷幼稚園を過ぎたあたりにある梅の木。梅の木とは思えない程とても背が高いのが特徴です。山門すぐ前には樹齢200年とも300年とも言われる見事な枝振りの梅の木があります。まるで龍が地面を這っているかのごとくで、こういった梅の木を「臥龍梅」と昔の人はいいました。
境内に入ると本堂中央から右手側に梅の木が集まっていて、壁に沿った小道を進むと紅白の梅のトンネルです。鳴き始めたウグイスの声も聞こえます。
光則寺が運営する長谷幼稚園のママさん達による、光則寺の梅の実でつくった梅シロップ、梅干し、ゆかりなどが9月に光則寺参道で行われる「のみの市」というイベントで手に入りますよ。数量限定、売切御免の人気商品。出会った方はぜひ。鎌倉土産におすすめの一品です。
「海蔵寺」も鎌倉有数の花の寺で、梅、福寿草に始まり紅葉に終わるまで始終季節の花で溢れる素敵なお寺さんです。
扇ガ谷の谷戸の奥まったところにあり、境内に入ると見えるのは薬師堂、庫裏といった歴史のある堂宇と海蔵寺を囲む山々のみ。そこに大きな枝垂れ梅が鮮やかに咲いて華を添えます。鐘楼の前にも枝振り見事な梅の木があって、薄いピンクと少し濃いピンクの紅梅が一つの木の枝で共演します。
梅の木の数は多くはありませんが、まるでタイムスリップしたかのような風情が楽しめる、梅花見におすすめのお寺です。
「宝戒寺」は鎌倉幕府滅亡時、東勝寺合戦で800人が自ら命を絶った北条氏一族、家臣を祀るために建てられたお寺。神社仏閣にはそれぞれ歴史がありますが、こちら宝戒寺ではより一層身が引き締まります。そのせいか、境内に咲く梅も厳かでどこか凛とした雰囲気。
参道には丸く剪定された梅の木がならび、参拝者を迎えてくれます。本堂前の大きな白梅、大聖歓喜天堂(だいしょうかんぎてんどう)付近の紅梅も素晴らしいのですが、宝戒寺の一番の見どころは境内中央左手にある大きな大きな枝垂れ梅。ただ、最近は元気がなくなってしまってます。元気付けに行ってあげてくださいね!
円覚寺は鎌倉で一、二を争う巨大寺院。ここにも梅が咲いてます。
梅の木が群生している様子はありませんが、それぞれの場所で趣深く咲いてます。存在感抜群の山門脇の梅や、茅葺屋根の選仏場前の梅、方丈前庭にある百観音の紅梅や枝垂れ梅、仏日庵の臥龍梅、黄梅院の梅とそれぞれに絵になります。
「浄智寺」は北鎌倉の情緒溢れる素敵なお寺であり、鎌倉五山第4位の寺格の由緒正しいお寺です。ここ浄智寺でも梅の花が咲きます。本数は多くありませんが清潔感のある趣を楽しんでください。
まず花が咲くのが書院前のソシンロウバイ。鮮やかな黄色が見事です。本堂の奥には何本かの梅の木。枝垂れ梅も見事に咲いてます。
北鎌倉駅で降りたら円覚寺の梅。それから東慶寺の梅を堪能して浄智寺の梅花見、というコースはいかがでしょう。
「英勝寺」は現存する鎌倉唯一の尼寺で鎌倉屈指の花の寺としても有名です。
ここ英勝寺一番の梅は本堂南側、仏殿と山門の間に咲く梅の木です。本堂は銅板葺きで質素、簡素な雰囲気ですが、古びた木の壁を背景に咲く白梅が色味を抑えて侘び寂びの風情です。華やかさは全くありあせんが、いい梅です。
仏殿北側にも梅があり、こちらは日陰のため南側よりも遅く咲きます。その他境内や参拝受付近くにも梅の木があります。参拝受付がある通用門前の梅は人力車に乗った方の写真スポットになっています。
鎌倉五山第5位の「浄妙寺」。まずは山門前で梅がお出迎え。
境内には、山門から奥へとまっすぐに伸びる参道両脇に紅白の梅の花が咲きます。銅板葺きの本堂といつも綺麗に保たれた庭を梅の花が彩ります。山門側から本堂を背景に見る梅も素敵ですが、本堂側から山門方面を振り返って見る梅もお勧めです。金沢街道を挟んだ南側にある山々がキャンバスとなって全く別の場所の梅を見ているようです。
鎌倉の梅の締めは、ここ「喜泉庵」。梅の木は2,3本ととても少ないのですが「梅花見」の本質があるように思います。
千利休は朝顔の花見に訪れた太閤秀吉のために一輪の花のみを残して他の朝顔を一切刈り取ってしまいました。そんな心づかいがここ「喜泉庵の梅」にはあるように思います。枯山水の庭にせり出た一本の梅の枝。それを抹茶をいただきながら雪見障子越しに慈しむ。或いは縁側の陽だまりに座ってゆっくり楽しむのもいいですね。
豪華絢爛、華やかな花見は桜にお任せして、梅の花見は控えめに「侘び」や「寂び(然び)」を楽しむ。「UNIQUELY鎌倉」からのご提案です。