「国宝」は文化財保護法によって国が指定した有形文化財です。
現在、いくつの国宝が日本にあるのでしょう。
実は国宝に指定されている建造物や美術工芸品は意外と数多くあり、1108件(2017年9月指定分まで)が指定されています。
そして鎌倉にはそのうち15件の国宝があります。
多くは宝物殿や国宝館などに大事に収納されていますが、鎌倉大仏のように寺院にありいつでも見られる国宝もあります。
鎌倉にはどのような国宝があるのか、「鎌倉の国宝一覧」と「一度は見ておきたい鎌倉の国宝4選」をご紹介します。
鎌倉にある15件の国宝の一覧表です。
寺院にあるおすすめの鎌倉の国宝を4つご紹介。
鎌倉唯一の建築物の国宝。
円覚寺高台にある弁天堂に鎮座する重厚な鐘。
建長寺の梵鐘も円覚寺と同じく国宝です。
言わずと知れた鎌倉のシンボルである鎌倉大仏も国宝のひとつ。
鎌倉には国宝に登録されているものが15個あります。建築物1つ、絵画4つ、彫刻1つ、工芸6つ、書跡3つです。
国宝名 | 収蔵場所 | 分類 | 拝観 |
---|---|---|---|
舎利殿 | 円覚寺 | 建築物 | 宝物風入れ(11月)で拝観可。 |
洪鐘 | 円覚寺 | 工芸 | 常時拝観可 |
鎌倉大仏 | 高徳院 | 彫刻 | 常時拝観可 |
梵鐘 | 建長寺 | 工芸 | 常時拝観可 |
蘭渓道隆像 | 鎌倉国宝館 | 絵画 | 建長寺の宝物風入れ(11月)で拝観可。 |
当麻曼荼羅縁起絵巻 | 鎌倉国宝館 | 絵画 | 光明寺の特別展(不定期)でのみ拝観可。 |
籬菊螺鈿蒔絵硯 | 鎌倉国宝館 | 工芸 | 鎌倉国宝館の特別展(不定期)でのみ拝観可。 |
太刀銘正恒附糸巻太刀拵 | 鎌倉国宝館 | 工芸 | 鎌倉国宝館の特別展(不定期)でのみ拝観可。 |
古神宝類 袿 五領 白小葵地鳳凰文二重織 |
鎌倉国宝館 | 工芸 | 鎌倉国宝館の特別展(不定期)でのみ拝観可。 |
古神宝類 朱漆弓 黒漆矢 沃懸地杏葉螺鈿平胡籙 沃懸地杏葉螺鈿太刀 |
鎌倉国宝館 | 工芸 | 鎌倉国宝館の特別展(不定期)でのみ拝観可。 |
蘭渓道隆墨蹟 法語規則 | 鎌倉国宝館 | 書跡 | 建長寺の宝物風入れ(11月)で拝観可。 |
紙本淡彩 十便図 池大雅筆 紙本淡彩 十宜図 与謝蕪村筆 |
川端康成記念会 | 絵画 | 通常拝観不可。特別展などで時折公開される時のみ拝観できる。 |
紙本墨画 凍雲篩雪図 浦上玉堂筆 | 川端康成記念会 | 絵画 | 通常拝観不可。特別展などで時折公開される時のみ拝観できる。 |
清拙正澄墨蹟 遺偈 | 常盤山文庫 | 書跡 | 通常拝観不可。特別展などで時折公開される時のみ拝観できる。 |
馮子振墨蹟 画跋 | 常盤山文庫 | 書跡 | 通常拝観不可。特別展などで時折公開される時のみ拝観できる。 |
15個ある鎌倉の国宝は、特別な時にしか公開されないものや、宝物殿に収蔵されているものが多いです。ここで紹介する寺院にある4つの国宝は、いつでも見に行くことができます(舎利殿に関しては通常は遠くからの拝観のみ)。
国宝めぐりをしながらの鎌倉散策は、その背景を垣間見れるので鎌倉の歴史をより感じられるはずです。いつもと違う鎌倉が見えてくるかもしれません。
鎌倉唯一の国宝建築である舎利殿は円覚寺の塔頭である正続院(しょうぞくいん)にあります。
広い円覚寺の奥の方に位置する正続院は、他の塔頭と一線を画すような厳かな雰囲気が漂っています。
中央の厨子には鎌倉幕府三代目将軍、源実朝が宋より請来(しょうらい)した仏舎利(お釈迦さまの遺骨)が安置されており、
その左右には地蔵菩薩と観音菩薩が祀られています。
曲線が美しい瓦葺きの屋根は威風堂々としており、背後の山々がそれを讃えているかのようです。
現在の円覚寺の舎利殿は、当初は西御門にあった大平寺(現在は廃寺)の仏殿でした。
当時の舎利殿が火災にあって消失した際、大平寺の仏殿を新たな舎利殿として移築したと伝わります。
現在、通常は出家入道僧が修行に励む場所で一般公開はされていませんが、山門から眺めることは可能です。
一般拝観が可能になるのは、お正月や秋の宝物風入れのときなど決まった日だけで大変貴重な一般公開となります。
円覚寺の境内を入って山門へ進まずに右側へ進んでいくと、少し薄暗い木々の中を通ります。
その先を行くと立派な鳥居と一瞬登るのをためらってしまうような長い階段が上部へ続いています。
老若男女、息を切らして階段を登りきった先には弁天堂と国宝洪鐘、弁天茶屋。
国宝の洪鐘は重厚な雰囲気で円覚寺の境内を見下ろすように鎮座しています。
関東一の大きさを誇る洪鐘(おおがね)は1301年(正安3年)に鋳造された物部国光の作です。
高さは259.5センチ。
細かい文字が施された美しい鐘は細部にまで緻密な神経が行き渡り、技法も洗練されていると評価され、国宝に指定されています。
北条時宗の子・北条貞時が国家安泰を祈って鋳物師に命じましたが鋳造がうまくいきませんでした。
そこで江ノ島の弁天さまに7日間参拝したところ、ある夜夢の中で円覚寺の白鷺池の底を掘ってみよというお告げがありました。
その通りにしてみると池の底より龍頭形の金銅の塊を発見、それを鋳造してこの洪鐘を造ったと伝わります。
この霊験に感激した貞時は江ノ島の弁天さまを洪鐘の神体として「洪鐘大弁才功徳尊天」と名付けて弁天堂を建立しました。
鎌倉五山第一位の建長寺。立派な山門の右脇に佇むのが国宝の梵鐘です。
茅葺き屋根の鐘楼に吊るされた重厚な鐘は確かな存在感を放っています。
建長寺のある場所はもともとは地獄谷と呼ばれる処刑場として知られていました。
その魂を弔うために心平寺という寺院が立っているのみでしたが、その地に建長寺が創建されました。
国宝の梵鐘は創建当初の数少ない遺品のひとつとして大変貴重です。
重さ2.7トン、高さ2.1メートル。
北条時頼公の発願により広く施主をつのり、関東鋳物師の筆頭である物部重光によって建長7年(1255年)に鋳造されました。
銘文は蘭渓道隆が筆を執ったもので、陽鋳と呼ばれ文字が浮き彫りになっているのが特徴です。銘文の中には「建長禅寺」とあります。
鎌倉のシンボルとして知られる鎌倉大仏は、浄土宗の高徳院のご本尊として祀られる阿弥陀如来です。
多くが分かっていない謎の多い大仏さまですが、民衆の浄財によって作られたと伝わっています。
創建当初は大仏殿が存在していましたが、度々の災害で倒壊。
それ以降現在に至るまで約500年もの間、露座の大仏さまとして鎌倉の街を見守ってきました。
この巨大な大仏さまを作るには様々な困難があったのだろうと、当時の人々の苦労が偲ばれます。
鎌倉大仏は内部を拝観(別途¥20)できるので、ぜひこちらも拝観してみてほしいポイントです。
内部が空洞となっている鎌倉大仏を中から見ると、一定の高さごとに横線が入っているのがよくわかります。
少しずつ、高さごとに土盛りをしながら作っていったという工程がよく見て取れることでしょう。
一つ気をつけてほしいのが胎内の気温です。
冬でも晴れの日だと暖かく、夏季はかなりの暑さになるので水分補給もお忘れ無く。