何れ菖蒲(あやめ)か杜若(かきつばた)。とっても美しい花と水の寺、海蔵寺。扇ガ谷と北鎌倉の間に位置している海蔵寺は、臨済宗建長寺派のお寺です。小さな境内ですが、鎌倉らしさが凝縮された、鎌倉随一の美しさともいわれるお寺です。
扇ガ谷の住宅街を北鎌倉方面に向かって進み、最も奥に位置しているのが海蔵寺です。かつては七堂伽藍を構えた大きな寺院でしたが、今はこじんまりと本堂・仏殿・庫裏がメインにあるのみ。しかし、小さいながらもとても風情のある人気のお寺なのです。仏殿には啼薬師(なきやくし)の異名を持つ、ご本尊の薬師如来が祀られます。
日頃、ご住職自らが丹念にお手入れを行なっている庭園は、鎌倉一美しいとも言われます。山門を入って見渡すと、赤い番傘が参拝者を迎えてくれます。庭園には四季折々美しい花々が咲き誇り、花の寺と呼ばれる所以にも納得できます。また湿度の高い谷戸ならでは、雨が降った後でなくてもどこからか水が流れ出て地面が水で潤っているため、水の寺とも呼ばれます。
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扇谷山海蔵寺 |
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臨済宗建長寺派 |
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〒248-0011 神奈川県鎌倉市扇ガ谷4-18-8 |
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JR横須賀線鎌倉駅徒歩18分 |
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9:30 〜 16:00 |
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無料(十六の井のみ100円) |
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0467-22-3175 |
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山門手前数十m左側に無料駐車場あり |
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上記駐車場に止められます |
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◼︎名称:名称:海蔵寺(かいぞうじ)
◼︎正式名称:扇谷山海蔵寺(せんこくさんかいぞうじ)
◼︎宗派:臨済宗建長寺派
◼︎御本尊:薬師如来
◼︎創建:建長5年(1253)
◼︎開山:藤原仲能、心昭空外(しんしょうくうがい)
◼︎開基:宗尊親王、上杉氏定
◼︎文化財:重要文化財である阿弥陀三尊来迎図板碑(鎌倉国宝館に寄託)をはじめいくつかの文化財を所持しています。
「UNIQUELY鎌倉」鎌倉国宝館
海蔵寺のある場所にはもとは真言宗の寺院が建っていました。建長5年(1253)、宗尊親王の命によって藤原仲能が本願主となり七堂伽藍の海蔵寺が建てられました。しかし、新田義貞の鎌倉攻めの際にすべて焼失してしまいました。その後、応永元年(1394)に鎌倉公方2代・足利氏満の命で扇谷上杉家6代当主・上杉氏定は心昭空外を中興開山に招いて海蔵寺を再興しました。室町時代は上杉氏の保護のもと栄えた海蔵寺は十数の塔頭を従えた大寺院となりましたが、江戸時代にはほとんどの伽藍や塔頭が消滅し、現在は総門と仏殿、本堂と庫裏が残るのみとなっています。
鎌倉十三仏巡り、第7番札所は海蔵寺の仏殿に祀られたご本尊の薬師如来さまです。堂内の真ん中に祀られています。御朱印は庫裏で頂けます。
「UNIQUELY鎌倉」御朱印と巡る、鎌倉十三仏
鎌倉三十三観音巡り、第26番札所は海蔵寺の本堂に祀られた十一面観世音さまです。御朱印は庫裏で頂けます。
「UNIQUELY鎌倉」御朱印と巡る、鎌倉三十三観音
鎌倉二十四地蔵巡り、第15番札所は海蔵寺の管理する岩船地蔵堂という小さなお堂に祀られる岩船地蔵さまです。境内ではなく海蔵寺からほど近い、亀ヶ谷坂切通しの扇ガ谷側入り口付近に建っています。御朱印は海蔵寺の庫裏で頂けます。
「UNIQUELY鎌倉」御朱印と巡る、鎌倉二十四地蔵
ハギに覆われた海蔵寺の山門。ハギの花が咲く時期は山門が見えなくなるほど生い茂ります。天和2年(1682)の銘が残されています。
鎌倉十井の一つ、底脱の井(そこぬけのい)です。山門の手前右手にあります。中世の武将である安達泰盛の娘・千代能がここに水を汲みにきた時、水桶の底がすっぽりと抜けたことからこの名がついたと伝わります。
海蔵寺の境内で存在感を放つ赤い番傘。精錬された境内の雰囲気にぴったりです。番傘の下に拝観料(志納)100円を納める場所があります。
山門を入って左手、庫裏の前にある海蔵寺の梵鐘。季節の花々や紅葉とのコラボレーションが見事です。昭和38年の建立。
茅葺き屋根の残る海蔵寺の庫裏と書院。庫裏は天明5年(1785)に建てられたものです。御朱印を頂く際には、玄関口にある鐘を静かに鳴らして扉を開けます。海蔵寺のご住職が快く対応してくれます。
海蔵寺ご本尊を祀る仏殿は安永5年(1776)に浄智寺から移築されたものです。土間が広がる堂内の真ん中にご本尊の薬師如来、両脇侍に日光菩薩、月光菩薩を祀ります。その他、十二神将像、伽藍神像などを祀ります。
ご本尊の薬師如来は啼薬師(なきやくし)とも呼ばれます。鎌倉十三仏の7番札所でもあります。胸に扉があり、胎内に土中から発掘されたという古い仏面を納めています。ある夜、開山禅師が赤子の泣き声を聞きつけ寺を見回ってみると、墓石の下から金色の光が漏れ芳香が漂っていました。そこを掘ってみると仏面が見つかったので、新たに薬師如来像を作らせ胎内に納めたと伝わっています。ちなみに胎内仏は61年に一度しかご開帳されません。
「UNIQUELY鎌倉」御朱印と巡る、鎌倉十三仏
海蔵寺の本堂は関東大震災の後に大正14年に再建されたものです。堂内の様子を見ることができます。鎌倉三十三観音の26番札所である十一面観世音を祀ります。
「UNIQUELY鎌倉」御朱印と巡る、鎌倉三十三観音
本堂の裏手に広がる庭園は現住職の作。左手から本堂を回り込むようにやぐらの前を進むと、その美しい庭園を見ることができます。
本堂の左手には複数のやぐらが残されています。石塔や五輪塔が見られ、鳥居の先には宇賀福神が祀られています。雨が降っていなくても、このあたりはいつも水が溢れています。
番傘から左に細道を進んで行った先にある岩窟に十六井戸と呼ばれる井戸があります。中央に観音菩薩と弘法大師像を祀ります。重要文化財である阿弥陀三尊来迎図板碑もここで見つかりましたが、現在は貴重であるため鎌倉国宝館に大切に保管されています。窟底には16の丸穴が空いていて、それぞれに水が溜まっています。伝承によると、「金剛功徳水」と名付けられており病魔退散などの霊験があるとされていますが、井戸ではなく納骨穴とする説もあります。
源頼朝の娘・大姫の守本尊である岩舟地蔵尊を祀る岩舟地蔵堂。小さなお堂の床下に石仏がおさめられています。海蔵寺の境内ではなく、海蔵寺へ向かう手前の高架をくぐった亀ケ谷坂切通しの入り口付近に建っています。鎌倉二十四地蔵の15番札所です。
「UNIQUELY鎌倉」御朱印と巡る、鎌倉二十四地蔵
参考文献:「鎌倉古寺歴訪 みほとけの祈り」山越実 著(平成29年4月5日 発行)、「鎌倉古寺歴訪 地蔵菩薩を巡る」山越実 著(平成26年10月18日 発行)