言わずと知れた「竹の寺」と呼ばれる鎌倉・報国寺。美しい2000本もの孟宗竹が覆う竹の庭は圧巻の景観です。鎌倉屈指の人気寺院で、いつでもたくさんの参拝者で溢れています。現在はそんな穏やかな報国寺ですが、その歴史は室町幕府の足利氏と鎌倉公方の足利氏との争いの中にありました。
創建は建武元年(1334)と伝わり、開基とされる足利家時は天下を取ることなく無念の中この世を去りました。その三代後の足利尊氏は天下を勝ち取り室町幕府を創建することになります。その後、永享10年(1438)に鎌倉公方の足利持氏と幕府側であった関東管領の上杉憲実が衝突し永享の乱が起きました。これにより破れた足利持氏は自害、その子である足利義久は報国寺で自害しています。
そんな歴史を感じながら報国寺を参拝してみると、ただ景色に感動するだけでなくまた違ったものを感じられることでしょう。足利氏の墓所は竹の庭の奥にあるやぐら内部にあるので、竹の庭だけでなくこちらにもぜひ足を運んでみて下さい。
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報国寺(功臣山報国寺) |
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臨済宗建長寺派 |
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〒248-0003 神奈川県鎌倉市浄明寺2-7-4 |
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徒歩:JR横須賀線鎌倉駅徒歩30分 バス:JR鎌倉駅より「鎌倉霊園正面前太刀洗行」「金沢八景行」、「浄明寺」下車徒歩3分 |
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9:00~16:00 |
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境内無料 / 竹庭拝観 200円 / 竹庭拝観+お抹茶 500円 |
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0467-22-0762 |
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http://www.houkokuji.or.jp/ |
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あり(3,4台分) 近隣にコインパーキングもあります |
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あり |
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三脚使用不可 |
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◼︎名称:報国寺(ほうこくじ)
◼︎正式名称:功臣山報国寺(こうしんざんほうこくじ)
◼︎宗派:臨済宗建長寺派
◼︎御本尊:釈迦三尊
◼︎創建:建武元年(1334)
◼︎開山:天岸慧広(てんがんえこう)。仏乗禅師ともいう。
◼︎開基:足利家時
◼︎文化財:国重要文化財である「東帰集」は現在鎌倉国宝館に寄託されています。開山の仏乗禅師(天岸慧広)作の漢詩集で非常に貴重なもので、また、開山使用の「木印」も国重要文化財として鎌倉国宝館に寄託されています。その他、鎌倉市の指定文化財である天岸慧広坐像、本尊の釈迦如来坐像などがあります。
「UNIQUELY鎌倉」鎌倉国宝館
開山の仏乗禅師は円覚寺の開山・無学祖元に師事した高僧で、この地に休耕庵を建てて修行をしました。鎌倉幕府が終焉を迎えた翌年である建武元年(1334)、足利家時は仏乗禅師を開山として報国寺を創建(上杉重兼も創設に関わったとする説もあります)。家時は室町幕府を創建した足利尊氏の祖父にあたる人物です。尊氏は1338年に室町幕府を樹立しました。しかしその後、鎌倉公方足利氏と室町幕府は対立していきます。鎌倉公方足利氏は永享10年(1438)に起きた永享の乱で破れ、一時は断絶しました。その際、鎌倉公方の当主であった足利持氏は瑞泉寺塔頭の永安寺(廃寺)で自害し、その子であった義久は若干10歳で報国寺で自害しています。
鎌倉三十三観音巡りの第10番札所は、十三仏巡りと同じく報国寺の本堂に祀られた聖観世音さまです。御朱印は寺務所でいただけます。
「UNIQUELY鎌倉」御朱印と巡る、鎌倉三十三観音
金沢街道から路地を一本入っていくと報国寺の入り口である山門に最初に出会います。平成19年に再建された山門は薬医門の様式となっています。薬医門とは「矢食い」という意味合いからきたとも言われています。矢を食い止める、すなわちお寺を守る最初の砦という意味が込められているのがわかります。
報国寺の中庭にも石庭がありますが、山門後ろの日陰になった部分にも美しい石庭が整えられています。生い茂る木々でちょうど木陰になっているので、夏でも涼しげな風情ある雰囲気を保っています。
山門から本堂へ向かう参道は実に美しい緑色をした苔が綺麗に管理されています。参道から右側の迦葉堂へと向かう階段脇も苔が美しいスポットです。
竹の庭の拝観受付口へ向かう前に、お隣の本堂へお参りしましょう。本尊の釈迦如来坐像(鎌倉市指定文化財)が祀られる本堂です。関東大震災以前は茅葺の屋根でしたが現在は瓦葺きとなっています。お寺の年中行事などが行われます。本堂右側の部屋に鎌倉十三仏と鎌倉三十三観音の札所本尊である聖観世音も祀られています。
「UNIQUELY鎌倉」御朱印と巡る、鎌倉三十三観音
「UNIQUELY鎌倉」御朱印と巡る、鎌倉十三仏
竹の庭の手前にあるのが報国寺の鐘楼です。茅葺き屋根の鐘楼には立派な梵鐘が吊るされています。報国寺の建造物の中で唯一残る茅葺き屋根です。紅葉の時期は周囲のもみじと梵鐘と竹林とが織り成す美しい景観が見られるスポットでもあります。
報国寺の坐禅堂です。本堂の隣にあり、木々に囲まれた雰囲気のある建物です。毎週日曜午前7寺から日曜坐禅会を行なっています。一般の人でも参加が可能。紅葉の時期には美しいもみじで彩られます。
「UNIQUELY鎌倉」鎌倉の紅葉、名所と見頃
報国寺を「竹の寺」と呼ばせる所以がこの竹の庭です。2000本もの孟宗竹が覆うこの庭園は夏でも涼やかな風が流れます。頭上を見上げると、空高く伸びる竹の葉と幹しか無い世界。非日常に時間を忘れてしまいそうです。
竹の庭の中にあるお抹茶とお干菓子をいただける茶寮です。かつては開山の仏乗禅師が修行のためにここへ建てた報国寺の塔頭が「休耕庵」と呼ばれていました。
「UNIQUELY鎌倉」休耕庵
「UNIQUELY鎌倉」お寺のお抹茶処特集
鎌倉公方足利一族を祀る墓所です。荒々しい岩肌に掘られた大きなやぐらは迫力さえ感じさせます。報国寺開基の足利家時や、永享の乱で10歳にして報国寺で自刃した足利義久の墓であると伝わります。
参考文献:「鎌倉古寺歴訪 みほとけの祈り」山越実 著(平成29年4月5日 発行)、「鎌倉古寺歴訪 地蔵菩薩を巡る」山越実 著(平成26年10月18日 発行)