鎌倉の多くの寺院が谷戸という静かなロケーションにありますが、その中でも異彩を放つ存在が覚園寺です。境内の自由拝観は行っておらず、通には堪らないお寺の方による約50分の拝観ツアーが1時間ごとに開催されています。観光客に踏み荒らされない事が、中世・鎌倉の素朴な雰囲気を現代に残してくれているように感じられます。
二階堂の奥地にポツンと佇む覚園寺は山に囲まれた緑の寺で、紅葉も見事なお寺です。裏山には天園ハイキングコースがあります。1218年に北条義時が建てた薬師堂が前身で、1296年に元寇の再来がないようにと、北条貞時によって覚園寺が創設されました。その後、火事で焼失したものを1354年に足利尊氏が再建、尊氏の祈願所として大切にされていました。現在でも薬師堂の天上には足利尊氏の自筆の銘を確認する事が出来ます。
そんな特別感溢れる覚園寺も、年に一度だけ解放される「黒地蔵盆」という行事がお盆にあります。覚園寺に祀られている黒地蔵さまは、「地の蔵」であり大地のめぐみ、万物を育む力をわけあたえてくれるお地蔵さまです。年に一度、8月10日の深夜0時から正午の間に参拝すると、亡くなった方のもとに想いや願いを運び届けてくれるとして多くの人が毎年訪れます。
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鷲峰山真言院覚園寺(じゅぶせんしんごんいんかくおんじ) |
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真言宗泉涌寺派 |
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〒248-0002 神奈川県鎌倉市二階堂421 |
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徒歩:JR鎌倉駅から徒歩35分 バス:JR鎌倉駅より京急バス「大塔宮行」、「大塔宮」から徒歩10分。細い道を奥へ奥へと進みます。 |
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平日: 10:00〜、11:00〜、13:00〜、14:00〜、15:00〜 土日祝: 平日の時間プラス12:00〜の時間帯も拝観出来ます。 拝観は案内人と一緒に説明を聞きながら。約50分。 |
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8月と12月20日〜1月7日は拝観休止。また、雨天荒天時は拝観休止。 |
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500円 |
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0467-22-1195 |
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あり。お寺の50mほど手前に無料専用スペースがあります。 |
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あり。 |
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有料区域は撮影禁止です。藍染堂までは撮影出来ます。 |
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NG |
毎年決まって8月10日、午前0時から正午まで行われる「黒地蔵盆」、または「黒地蔵縁日」と呼ばれる行事。覚園寺に祀られた黒地蔵尊さまが死者に想いや願いを届けてくれる日です。普段は自由に拝観出来ない境内ですが、この日だけは解放され、夜中から昼間まで絶えず多くの人で賑わいます。
はじめに愛染堂で参拝します。お昼前に行くと初めは凄い行列でしたが、徐々に人も少なくなりました。愛染堂には「百万遍の念珠」がぶら下がっており、これを回してお参りします。念珠には「多くの幸が巡ってきますように、物事がスムーズに前へ進みますように」という意味が込められています。丁寧に回しますが、うっかり車輪から念珠が脱線することも。注意書きを見れば、「自分の手で修正することでまた前に進むことが出来るので、同様の御利益があります」とのことで一安心。
普段は自由拝観出来ない境内へと進みます。千体地蔵堂でロウソクとお線香を買い、黒地蔵さまにお参りします。あの世とこの世の「縁」を繋いでくれる黒地蔵さま。「縁日」と聞けば、今ではお祭りのイメージがありますが、ここでは本来の姿の「縁日」を見た気がしました。その後、雰囲気のある十三仏やぐら、本堂で薬師三尊さまに会いに行きます。読経が響き渡る茅葺き屋根の本堂の中。真夏の熱気と人口密度の高さで蒸し風呂のようですが、心を静かにしてお参りすると涼しい気分になるものです。
境内の奥にある、内海家住宅と呼ばれる江戸時代の古民家では「朝粥」を頂くことが出来ます。由比ヶ浜駅のすぐ側にある飲茶キッチン豊龍(フェンロン)さんが出店しています。朝粥とニラまんじゅう、杏仁豆腐のセットで950円です。畳敷きの古民家には、机と座布団と扇風機。真夏の熱いお粥…なのですが、この空間で頂いているせいか不思議とそこまで暑さを感じません。
山門の近くでは、縁日ならではの出店も。そのうちの一つがレンバイの中で美味しいパンを焼いている「パラダイスアレイブレッド&カンパニー」さん。8月10日限定の可愛らしい「黒地蔵パン」が手に入るのはこの日この場所だけです。
鎌倉宮から覚園寺までの民家の間を通る狭い道。いつもは静かですが、この日ばかりはタクシーや自家用車が頻繁に行き交います。徒歩で行かれる方はくれぐれもご注意を。民家の前には「地蔵尊」のカラフルの提灯が所々に飾られ、縁日に彩りを添えます。