鎌倉最古の寺院・杉本寺。金沢街道の道沿いに鎮座する杉本寺は「杉本観音」と呼ばれ、地元で親しまれています。不思議と重厚な存在感を放つ寺院の歴史は、鎌倉幕府が成立するおよそ500年前にさかのぼります。
杉本寺は奈良時代の天平6年(734)に高僧・行基によって創建されました。行基は全国で様々な社会事業を行なった奈良時代の僧侶で、庶民の深い信仰を集め行基菩薩と呼ばれた人物です。杉本寺のご本尊は三体の十一面観音像ですが、そのうちの一体は行基自らが作ったと伝わるものです。
仁王門まではコンクリートの階段ですがその上は苔生した風情ある石段が続いています。杉本寺を象徴する苔生した石段は、その長い歴史を物語っているかのようです。その先の本堂は、鎌倉で一番仏像を近くで感じられる特別な空間。間近で感じるその圧倒の空気感を一度は体験してみてはいかがでしょう。
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杉本寺(大蔵山杉本寺) |
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天台宗 |
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〒248-0002 神奈川県鎌倉市二階堂903 |
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徒歩:JR横須賀線鎌倉駅徒歩30分 バス:JR鎌倉駅より「鎌倉霊園正面前太刀洗行」「金沢八景行」、「杉本観音」下車徒歩2分 |
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8:30-16:30 |
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大人200円 / 小人100円 |
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0467-22-3463 |
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http://sugimotodera.com/ |
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なし (近隣コインパーキングをご利用ください) |
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なし |
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本堂内は撮影禁止。 |
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◼︎名称:杉本寺(すぎもとでら)
◼︎正式名称:大蔵山杉本寺(だいぞうざんすぎもとでら)
◼︎宗派:天台宗
◼︎御本尊:十一面観音
◼︎創建:天平6年(734)
◼︎開山:行基(ぎょうき)、藤原房前(ふじわらのふささき)
◼︎開基:光明皇后(こうみょうこうごう)
◼︎文化財:重要文化財であるご本尊の木造十一面観音像2体、本堂は神奈川県の指定文化財となっています。
杉本寺は鎌倉幕府が創設される約500年も前からこの地に建っている、鎌倉最古の寺院です。聖武天皇の后である光明皇后の願いにより、行基と藤原房前によって建立されました。この時、ご本尊に安置された十一面観音像は行基自らが彫ったものと伝わり、現在も3体の秘仏のうちのひとつとして祀られています。鎌倉時代に火災が起こった時、ご本尊の三体の十一面観音像はみずから境内にあった杉の大木の下に逃げたことから「杉の本の観音」と呼ばれるようになったと言います。
鎌倉三十三観音巡り、1番札所は杉本寺ご本尊である十一面観音さまです。本堂には御本尊の3体の十一面観音像が秘仏として祀られます。お堂の奥の奥に鎮座するご本尊は、ほの暗い明かりが灯される中、格子戸の奥にいらっしゃいます。平安時代作と言われる観音様を含む由緒正しき観音さま。漂うオーラに圧倒されます。三十三観音巡りの最初に参拝すると「発願印」を押印していただけます。
「UNIQUELY鎌倉」御朱印と巡る、鎌倉三十三観音
鎌倉二十四地蔵巡り、4番札所は杉本寺の身代地蔵さま。実は身代地蔵と名の付くお地蔵さまは2体いらっしゃいます。正式には本堂脇の杉本太郎身代地蔵さまが二十四地蔵の札所本尊ですが、本堂内の身代地蔵さまにもお参りするとよいでしょう。
「UNIQUELY鎌倉」御朱印と巡る、鎌倉二十四地蔵
鎌倉二十四地蔵巡り、6番札所は杉本寺の本堂に祀られた尼将軍地蔵さま。御朱印は本堂の入り口にある寺務所でいただけます。
「UNIQUELY鎌倉」御朱印と巡る、鎌倉二十四地蔵
運慶作と伝わる仁王像が両側から睨みをきかせています。赤いお顔は迫力満点です。
鎌倉でも数少ない茅葺き屋根の仁王門です。茅葺き屋根は10年から15年ごとに葺き替えが必要です。浄財を茅一東2,000円から受け付けており、後世に茅葺を残すための努力を続けています。
苔の階段の手前右側にある赤い鳥居が入り口です。ここへお参りすると大きな蔵が建つほど富に恵まれるという言い伝えがあります。
杉本寺を象徴する苔生した階段。美しいグリーンが参拝者を魅きつけます。過去にはこの階段を通って参拝者は本堂へと向かいましたが、現在は保全のためこの階段は通らず左側につけられた迂回ルートを通って本堂へと向かいます。
観音堂と呼ばれる茅葺き屋根の本堂は神奈川県の重要文化財に指定されています。秘仏であるご本尊の十一面観音像三体、前立の源頼朝寄進の十一面観音像、地蔵菩薩二体、不動明王像、観音三十三身、びんずる尊者像が祀られます。ずらりと並んだ仏像群は圧巻。ご本尊以外はどの仏像にも間近でお参りできるところが杉本寺の魅力の一つです。
杉本寺の御本尊は3体の十一面観音様。共に秘仏として本殿の奥に祀られているため、ぼんやりとお姿を確認することはできますが、間近に拝むことはできません。(毎月1,18日ご開帳)
伝、行基作 十一面観音(通称下馬観音)
伝、円仁(慈覚大師)作 十一面観音 国の重要文化財
伝、源信(恵心僧都)作 十一面観音 国の重要文化財
本堂の右側に並んだ六地蔵尊と身代地蔵尊。一番右が身代地蔵で、杉本太郎身代地蔵と呼ばれます。ある時、杉本太郎義宗が杉本寺を参拝した帰り敵兵に矢を放たれました。命中したように思えたが、杉本太郎義宗は悠然とその場を立ち去りました。不思議に思った敵兵が矢を探したところ、地蔵尊に刺さっておりそこには鮮血が滲んでいたという言い伝えが残っています。
「UNIQUELY鎌倉」御朱印と巡る、鎌倉二十四地蔵
本堂の右手に多数並べられた五輪塔や石仏。南北朝時代、杉本寺の裏手に建っていた杉本城は落城しました。この時杉本城に拠っていた斯波(しば)一族はおよそ300人がここで自刃しました。その供養塔がこの五輪塔であると言われています。
本堂の奥に鎮座する権現堂には熊野三山に祀られる熊野神が勧請されています。鳥居の奥に続く階段の上に小さな祠があります。
本堂の前にある鐘楼には立派な梵鐘が吊るされています。
参考文献:「鎌倉古寺歴訪 みほとけの祈り」山越実 著(平成29年4月5日 発行)、「鎌倉古寺歴訪 地蔵菩薩を巡る」山越実 著(平成26年10月18日 発行)