鎌倉五山に次ぐ関東十刹に列せられた格式ある寺院・瑞泉寺。鎌倉の中心地から離れた紅葉ガ谷と呼ばれる谷戸に、ひっそりと佇みます。山号の「錦屏山」はお寺を囲む山の紅葉が錦の屏風のように美しいことから付けられました。山に抱かれ深い緑に包まれている境内は、日々の忙しさを忘れさせ心を落ち着かせてくれる空間です。四季折々の花を楽しめる花の寺としても知られます。
瑞泉寺の開山である夢窓国師は、当時の権力者のほとんどから支持を集めていたカリスマ的な高僧でした。境内裏手にある「瑞泉寺庭園」は、作庭にも才能を発揮した夢窓国師が作ったとされ、国の名勝に指定されています。現在立入は出来ないのですが、庭園に架かる橋を渡り、岩を登って行くと錦屏山の山頂へと続いています。その道は18個のカーブがあることから「十八曲がり」と呼ばれます。この山頂からは富士山も望める景勝地となっているのです。
瑞泉寺の裏側には天園ハイキングコースがあり、瑞泉寺のすぐ近くに入り口があります。瑞泉寺を知るためには、こちらも是非歩いてみて欲しいスポットです。
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錦屏山瑞泉寺(きんぺいさんずいせんじ) |
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臨済宗円覚寺派 |
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〒248-0002 神奈川県鎌倉市二階堂710 |
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鎌倉駅から徒歩40分。駐車場は10台程停められます。鎌倉駅から京急バス「釜20・4番」大塔宮行き。バス停「大塔宮」から徒歩10分。 |
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9:00〜17:00(入山は16:30まで) |
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無休 |
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大人200円 / 小中学生100円 / 障がい者無料 |
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0467-22-1191 |
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http://www.kamakura-zuisenji.or.jp/ |
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約10台 |
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あり |
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撮影自由 |
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NG |
◼︎名称:瑞泉寺(ずいせんじ)
◼︎正式名称:錦屏山瑞泉寺(きんぺいさんずいせんじ)
◼︎宗派:臨済宗円覚寺派
◼︎寺格:鎌倉五山第二位 / 臨済宗円覚寺派大本山
◼︎御本尊:釈迦如来
◼︎創建:嘉歴2年(1327)
◼︎開山:夢窓国師
◼︎開基:足利基氏(中興)
◼︎文化財:国指定重要文化財として木造夢窓国師坐像、鎌倉市文化財として千手観音菩薩、どこも苦地蔵などがあります。
嘉歴2年(1327)に鎌倉幕府の重臣であった二階堂道蘊が夢窓国師を開山として瑞泉院を建てたのが始まりです。夢窓国師は多くの人々から深く帰依され、鎌倉公方であった足利基氏(足利尊氏の四男)もまたその一人でした。足利基氏によって瑞泉寺は中興され、それ以来鎌倉公方の菩提寺として栄えました。至徳4年(1387)には鎌倉五山に次ぐ格式のある関東十刹に列せられました。近代では多くの文化人が瑞泉寺に集いました。高浜虚子や吉田松陰、山崎方代などの歌人の碑が境内に残ります。
瑞泉寺の境内には150本もの梅の木があると言われ、その規模は鎌倉の寺社では一番の規模を誇ります。種類も豊富で、白梅、紅梅、緋梅、黄梅、枝垂れ梅と沢山の種類の梅が楽しめます。
受付横の前庭には梅林があり、その中をくぐり抜けるように小道が作られまるで梅のトンネルをくぐり抜けるよう。深呼吸をして淡く鼻をくすぐるような梅の香りを楽しんでください。さて、本堂へと上がるとここにもたくさんの梅の木があります。山門をくぐると見えるのは境内いっぱいに、枝振りも大きさも見事な梅、梅、梅。瑞泉寺庭園前の梅や、どこも苦地蔵様を祀る地蔵堂前の梅、本堂横の枝垂れ梅、本堂前での黄梅と見所も沢山です。
瑞泉寺は三方を山に囲まれた紅葉ガ谷という場所にあって、鎌倉の街中心部や沿岸部と比べると気温も普段から低めのため、梅の見頃も鎌倉の他の梅の名所と比べて少し遅めです。その中でも日当たりのよい本堂前の梅が先に咲き、前庭の梅はそのあとに見頃を迎えます。
鎌倉市の天然記念物に指定された黄梅が本堂前に堂々と鎮座しています。参道挟んだ右手にも小さめの黄梅の木が数本。その珍しさに気がつかずに素通りされる方もいらっしゃいますが、貴重な梅の木ですからお見逃しなく。
境内の立て札によると「江戸時代から知られた梅の品種」であり、本堂前のこの黄梅をもって「牧野富太郎博士(編集部注:日本植物学の父と呼ばれる植物学者)はオウバイの学名を付けられた」とあります。
木の幹や木肌はとても梅らしく、枝振りはとても風情ある趣ですが、花は一見しただけでは梅とは思えないほどに花弁は退化しています。花弁よりも、花の中央からの何本もの発達した雄しべが存在感を示します。
鎌倉でも黄梅が見られるのは珍しく、とても貴重なこの黄梅。立て札では「帯黄色」とその淡い黄色を表現していますが、強い黄ではなく、黄色味を帯びた様はまさに「帯黄色」といった感じです。伝統的な日本の美しさを感じます。
瑞泉寺では四季を通じて花が咲き、我々を楽しませてくれます。紅葉前にその貴重な姿をみせてくれるのが鎌倉市天然記念物指定の「冬桜(フユザクラ)」。元禄年間 水戸黄門光圀(編集部注:徳川光圀)公お手植えと伝わるものだそうです。淡いピンクで一重の花は、いつも見慣れたソメイヨシノと見紛うばかり。秋彼岸(9月下旬頃)から咲くという冬桜。秋に鑑賞する一重の桜はとても違和感があって楽しんでいただけるかと思います。
瑞泉寺の山号は「錦屏山(きんぺいざん)」。背後に迫る山々がまるで錦の屏風のように美しいことが由来。瑞泉寺がある谷間も「紅葉ガ谷」と言いますから、紅葉の美しさは折り紙付きです。
紅葉の見頃を迎えるのは鎌倉では一番最後で12月に入ってから。山門の先の紅葉や、地蔵堂前の紅葉などが見どころです。観光地”然”としていない上に、奥深い谷戸の風景、岩肌がむき出しになった侘び寂びの庭園と紅葉を楽しむにはうってつけの環境です。
瑞泉寺は様々な花の名所としても有名ですが、もちろん紫陽花も綺麗なのです。逃さず見ておきたいポイントとしては、境内に至るまでの道路の脇の盛大な紫陽花ロード、拝観口裏手の庭園の紫陽花、また境内に咲く風情ある紫陽花の花々。詳細はこちらをご覧ください。
UNIQUELY鎌倉「鎌倉の紫陽花 名所と見ごろ」
四季折々の花々で溢れる瑞泉寺の境内に鎮座する本堂では、正面に御本尊の釈迦牟尼仏が、向かって右手には開山(瑞泉寺を開創した僧侶)の夢窓国師、そして御本尊左手には千手観音様がいらっしゃいます。本堂入口の少しだけ開くように設定された障子戸の間から遠くに本堂奥にいらっしゃる観音様を拝むのですが、鎌倉市の指定有形文化財にも指定された由緒ある観音様です。
鎌倉三十三観音巡りの際は、御朱印をいただく前にまずは千手観音様にお参りを済ませましょう。
UNIQUELY鎌倉「御朱印と巡る、鎌倉三十三観音」
鎌倉二十四地蔵の第7番札所は、瑞泉寺の地蔵堂に祀られたどこも苦地蔵さまです。名勝庭園の手前にある小さなお堂の中に祀られています。
UNIQUELY鎌倉「御朱印と巡る、鎌倉二十四地蔵」
瑞泉寺の拝観口裏手に広がる庭園は四季を通じて様々な花が咲きます。境内のメインエリアに上がる前にこちらをぐるりと一周してみると、きっとお気に入りの花が見つかることでしょう。
背の高い木々が生い茂る下を通り抜けると二股に分かれた階段へと通じています。左側が旧道で右側が新道となっていますが、どちらも通行が可能です。歩きやすいのは新道ですが、あえて歩きにくい旧道を行って歴史を感じてみるのもいいかもしれません。
階段を登りきった上にあるのが趣のある山門です。新緑の清々しさも見事ですが、やはり紅葉ヶ谷と呼ばれるこの地の紅葉は素晴らしいです。歌人でもあるご住職が選定したその日の一句が右側にいつも掲げられています。
瑞泉寺の境内は「瑞泉寺境内」として昭和46年(1971)に国の史跡に指定されています。鎌倉中心部から少し離れるものの、足を伸ばしてみる価値がここには存分にあります。四季を通じて素晴らしい景色が待っています。
山門を入ってちょうど正面の方向にあるのが庫裏です。御朱印はこちらでいただけます。その右側には茶室(非公開)などが並びます。
美しいカーブを描く屋根が特徴的な瑞泉寺の本堂は、御本尊の釈迦牟尼仏、徳川光圀が寄進したと伝わる千手観音菩薩、そして開山の夢窓国師像が祀られています。本堂の窓の隙間から中の様子を見ることができます。心を込めて参拝しましょう。
ユニークな名前で親しまれる地蔵堂に祀られたどこも苦地蔵さまは、鎌倉二十四地蔵の第7番札所。もともとは扇ガ谷の地蔵堂にあったものが瑞泉寺へ遷って来ました。ある時、堂主が貧しすぎて逃げ出そうとしたところ、お地蔵さまが夢枕に立ち「どこも苦、どこも苦(苦しいのはどこへ行っても同じだ)」と言ったと伝わります。
優れた作庭家でもあった夢窓国師が手掛けた庭園です。昭和45年(1970)に復元されました。鎌倉に残る鎌倉時代唯一の庭園としてとても重要です。鎌倉石の性質を存分に活かしたダイナミックな造形が魅力的で国の名勝庭園にも指定されています。左側にかかる橋から上へと山を登ると(一般非公開です)、富士山も望める徧界一覧亭へと通じています。